
JR烏山線の烏山駅前に重厚なたたずまいをみせる石造り倉庫が3棟併設されている。これらの倉庫群は栃木県特産の石材である大谷石造りであり、建造年は昭和14年に2棟、昭和15年に1棟造られた。
烏山通運の創設者は、新井萬吉であり、明治30年以降運送業・通運業を開業、また大正10年には、烏宝通運株式会社(内国通運会社取引店)を創設している。
大正12年に国鉄烏山線が開通した後、宝積寺・馬頭など近隣の通運会社を統合して現在に至っている。
また、新井家は、明治5年に郵便取扱所を開設した二代目阿久津幸平から事業を引き継ぎ、明治25年に郵便局を開業するなど、言わば近代以降における当地方の輸送業務を一手に担ってきたことになる。
建造当初の入口は欠円アーチである。高さ197㎝・幅182㎝・ライズ62㎝、面積は198.34㎡である。当時は、物資の搬入に大八車が使用されていたので、この大きさでも十分だったものと思われる。現在はフォークリフトが出入りできるように新しい入口に代えられており、欠円アーチの入口は使われていない。
また、建物の正面・側面・背面には多数のバットレスが設置されており、その景観は圧巻である。
近代化の象徴としての鉄道の開通とそれに伴う駅前における石造り倉庫群の建造。重厚かつ端正な倉庫群は地域産業を支えてきた拠点施設として当時の風情を今に伝えるとともに、現在も倉庫としての機能を継承している。